以下、上記PDFの内容をそのまま掲載する。
ImageJは誰もがダウンロードしてすぐに使うことのできるパブリックドメインの画像処理・解析ソフトである。GUIを使ったマウスのみによる操作からJavaプログラミングによる機能の追加、クラスタを使った大規模な計算まで幅広い使用が可能であること、数多くの研究者・開発者が関わっていることなどから、生物学研究者にとってその習得にはさまざまな利点がある。今回はドイツのEMBLで年に二度ほど開講しているチュートリアルを行う。このチュートリアルは、生物系の院生・ポスドク・研究者の多くが画像処理・解析を学んだ経験をもたない一方、イメージングが日常的になっている研究の現場でとりあえず困らないための実戦的なクラッシュコースとして始まった。直観的な理解をなによりも重視している。こうした手段にすでに熟練している方には、物足りない内容になるかもしれない。
この文書ではチュートリアルの概要と必要事項についてのみ記述する。メインの文書は下記にリンクするCMCIのウェブサイトから入手可能なテキストである。
まずウェブブラウザのブックマークに入れておいて欲しいサイトがある。ImageJの本家。
基本的にすべての情報はこちらからアクセス可能である。
チュートリアルではスライドを用いて解説を行い、並行して各自ラップトップで演習を行う。スライドの内容は次のリンク先のページからダウンロードできる2冊のテキスト(PDFファイル)に全て書かれている。
http://cmci.embl.de/documents/ijcourses
印刷されたテキストが必要な方は、各自印刷して持参していただきたい。
まず次のサイトからそれぞれのOSに適合したインストーラをダウンロードする。\
上記ダウンロードページのインストールの仕方を読み、圧縮ファイルを解凍した後、所定のスッテプにしたがいFijiをインストールする。完了したら、Fijiメニューの
[Help > Update Fiji]
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によってプログラムを最新の状態にする。アップデータのモジュール自体が新しくなるなどの場合、何度かアップデートとFijiの再起動を繰り返すことが必要になる。
Fijiは数多くあるImageJのディストリビューションの一つである。複数の研究者や開発者がGitを通じて継続的に機能を追加・修正しているシステムという特徴がある。このためコードはすべてオープンであるが、科学研究において使われるすべてのコードはオープンでなければ科学的な評価ができない、という立場からもオープンソースを推進している。ユーザーの立場から眺めると、ImageJに比べて機能がとても多い。まずなんのためにどの機能を使ったら良いのか、という点でつまずくケースを多く見かける。とはいえ、習熟した暁には多様な機能を複合的に使うことができるようになり、更にはプラグインなどを独自に開発する際に、自前ですべてを書くことなくさまざまなライブラリを組み合わせることで効率的に目的の機能の実装を果たすことが可能になる。今回Fijiを使用する主な理由は、マクロをプログラミングする際にScript Editorが簡便だからである。
次のページのプラグインをダウンロードし、Fijiに追加する。
http://cmci.embl.de/downloads/sampleimageloader
CMCIのトップページ(cmci.embl.de)からは、Downloads > Sample Image Loader
を辿る。ローカルに保存したファイルの名前はEMBL_sampleimages.jar
のはずである。これを確認したら、Fijiのメニューから、
[Plugins > Install Plugin]
を行い、EMBL_sampleimages.jar
を選ぶ。インストールが成功するとメニューに"EMBL"という項目が現れる。もしこの項目が現れなかったら、
[Help > Refresh Menus]
により、メニューを再読み込みする。うまくインストールの完了をチェックするため、
[EMBL > Samples > blobs.tif]
により、画像“bobs.tif”をネットを通じてロードできることを確認する。
生物学で画像を扱う上で必要な知識を実際に手を動かしながら学ぶのがこのチュートリアルの目的である。画像を数値データとして扱うことは日常的な意味での画像の扱いとは異なることを体感し、定量的に処理する技法を学ぶ。
一日目の6時間は基礎の演習を行う。項目は以下の通り。詳細はテキスト“Basics in Image Processing and Analysis”を参照。
基礎の基礎
強度
フィルタリング
分節化
時系列の解析
通常は8時間ほどかかる内容で更に宿題があるが、経験者が多いことも考え6時間に短縮するつもりである。
ImageJのマクロは作業を自動化するために簡便なスクリプティング言語である。GUIのメニューと密接に対応しており、メニューを操作し、マクロレコーダでコマンドを抽出しつつ結果を目で確認しながら開発できるので容易である。習得速度が速い。
二日目の3時間はImageJマクロの書き方を学ぶ。時間がかぎられるので、基礎となる部分を集中しておこなう。内容の詳細、およびチュートリアルで触れる時間のない高度な運用に関してはテキスト“Macro Programming in ImageJ”を参照されたい。
Script Editorの使い方、Hello World、コマンドリファレンス
変数の扱い
マクロレコーダ
ループ・分枝
配列・輝度プロファイルの例
ImageJのマクロはGUIを経由したスクリプトであるため、ヘッドレス(GUIなし)で使用する際にはさまざまな制限が生じる。また、マクロの関数が用意されていないプラグインを使う場合などに不自由を感じることがある。これらの問題があるときにはJavaの仕様(APIと呼ばれる)に直接アクセスできるスクリプト言語を使う必要がある。
JavaAPIを使うにはJavaについてある程度の知識を持っていることが必須であり、Javadocと呼ばれる仕様書(ImageJの場合にはImageJのJavadoc)を繰りながらスクリプトを書くことになる。ImageJのJavadocは次のリンク先にある。
http://imagej.net/developer/api/
ImageJにおけるスクリプティング言語としては主にJavascript(Rhino)や、Jython (Javaで実装したPython)などがある。JavascriptはImageJにおいてそのまま使うことが出来る。また、Javascriptはマクロレコーダの記録言語としても実装されており、マクロと同じように記述することができる。ただしこの場合の運用は、マクロと同程度の機能に限られるので、Javadocを駆使しながらコーディングを行うのでなければマクロでプログラムを書くことをお勧めする。
JythonはPythonの文法であること、Jython自体に実装されているさまざまな機能があることから(特に文字列操作、ファイルシステムへのIOにおいてさまざまなメリットがある)、Jythonを使う研究者が多い。ImageJでJythonを使うにはJythonのライブラリをインストールし、自分で設定を行う必要がある。Fijiでは最初からJythonが導入されている。
処理速度を高めるならば、ClojureもしくはScalaを使う。
今回のチュートリアルでは触れないが、テキストの最終章はJavascriptの導入について書かれているので必要のある方は参照されたい。
以下、ブラケットに囲まれた文章は、メニューのヒエラルキーを示す。 ↩